「9月の京都はまだ紅葉シーズンには早い?何をするのがいいだろう。」
「残暑が厳しい9月の京都を快適に観光する方法ってないかな?」
9月の京都は夏の名残が色濃く、日中は30℃近くまで気温が上がる日も少なくありません。紅葉シーズンにはまだ早く、外を歩き回るには体力を消耗しがちな時期でもあります。
そんな時期におすすめなのが、涼しくて心も癒される「貴船」エリア。市内よりも数度気温が低く、川のせせらぎに包まれて過ごす川床ランチはこの季節だけの贅沢な体験です。
さらに、貴船神社は京都屈指のパワースポットとしても知られ、自然の中で心を整える神社巡りも堪能できます。
この記事では、9月の京都旅行で貴船を訪れる魅力をたっぷりとご紹介します。ぜひ貴船で、心も体もリフレッシュする旅を楽しんでください。
京都の奥座敷・貴船ってどんなところ?

京都市中心部から電車とバスで約1時間。貴船は、自然に囲まれた静かな山あいに位置し、古くから「京都の奥座敷」と呼ばれてきた場所です。

貴船は地名としては「きぶね」と読みますが、貴船神社は「きふね」と濁らずに読みます!
豊かな緑と清流に包まれ夏でも市内より2〜5℃ほど気温が低く、涼を求めて多くの人が訪れます。
9月の京都は残暑が厳しい時期ですが、貴船なら川のせせらぎに耳を澄ませながら心地よい風とともに静かなひとときを過ごせるでしょう。
また、縁結びのご利益で知られる貴船神社への参拝や川の上に設けられた川床でランチを楽しむなど、ここでしか体験できない魅力も豊富。喧騒を離れて心を整えたい時に、ぴったりの場所です。
京都駅から貴船へのアクセス方法


貴船は京都市内でも少し行きづらい場所にあり、どのルートでも乗り換えが必要です。
電車メイン【時間が読みやすい・おすすめ】


JR奈良線で東福寺駅まで行き、京阪電車に乗り換えて出町柳駅へ。さらに叡山電鉄鞍馬行きに乗車し、貴船口で下車したら京都バス33号系統で貴船へ向かう方法です。
乗り換えはやや多いもののそれぞれの路線のダイヤが安定しているため、時間を計算しやすいのが魅力。叡山電鉄は観光列車も運行しており、車窓から四季折々の景色が楽しめるのもおすすめポイントです。
運賃は他のルートと比べるとやや高めで、約1,100円かかります。



なお、貴船口から貴船までは歩くことも可能ですが30分ほどかかります。
途中に見どころもあまりなく坂道なので、ここはバスを利用するのがおすすめです。
バス+電車【乗り換えが少ない】


京都駅前バスターミナルから京都市営バス4号系統に乗り、出町柳駅前で下車。徒歩4分ほどで叡山電鉄の出町柳駅に移動し、鞍馬行きに乗車。鞍馬口から京都バス33号系統で貴船へ向かうルートです。
京都駅から出町柳まではバス1本で行けるため、乗り換えが少ないのがこのルートの魅力。ただし、市バスは観光客で混雑しやすく、観光シーズンや土日には遅延が発生しやすい点には注意が必要です。
運賃は約900円で、コストとアクセスのバランスが取れたルートです。
地下鉄+バス【一番安い】


京都駅から地下鉄烏丸線で終点の国際会館駅まで向かい、徒歩6分で京都バスのバス停へ。52号系統に乗って貴船口まで行き、そこから京都バス33号系統で貴船へ入るルートです。
料金は安いですが、国際会館から貴船口までの道のりは山間部を走るため車酔いしやすい人にはやや不向きです。
また、本数も限られており遅延すると貴船口からのバスに乗れない可能性もあるため、余裕を持った計画と入念な時刻表の確認が必要です。
送迎を利用する【裏ワザ】
川床を営業している一部店舗では、京都駅や貴船口までの無料送迎を行っている場合があります。
たとえば「右源太」では、昼11:30からの食事予約に合わせて京都駅まで送迎を実施。叡山電鉄を利用する場合は、当日乗車前に電話で時刻を伝えると貴船口駅の送迎バス乗り場まで迎えに来てもらえます。



ただし、全ての店舗が送迎を実施しているとは限りません。
ご自身が利用する川床のお店が送迎を行っているのかどうかは、事前に必ず確認してください。
「食べログ」からなら、京都駅送迎付きプランも予約できます。Vポイントも貯まってお得!
貴船の歴史を知る|水と信仰に守られてきた“京の奥座敷”


貴船は京都市街から離れた山あいに位置し、清らかな貴船川沿いに広がる集落です。夏でも涼しい気候と美しい水に恵まれ、古くから京都の人々に愛されてきました。
現在では川床や貴船神社で知られていますが、その歴史は古代にまでさかのぼります。
貴船神社の成り立ち
古くは平安時代以前から、この一帯は「気生根(きふね)」とも呼ばれ、生命力や活力が湧き出る場所として人々に信仰されてきました。その中心にあるのが水の神様を祀る貴船神社です。
伝承によると、神武天皇の母とされる玉依姫(たまよりひめ)が、黄色い船に乗って淀川から貴船川をさかのぼり、たどり着いた場所に社殿を建てたのが貴船神社の始まりとされています。



「貴船」という地名も、この黄船に由来するのだとか。
貴船神社の創建年代は不詳ですが、1300年以上前にはすでに社殿の造替が行われた記録が残っており、長い歴史と信仰の厚さを物語ります。
川床文化の誕生
その後、貴船は神社の門前町として発展し、特に夏は涼を求める人々が訪れる避暑地となりました。
大正時代には、川沿いの茶店が川に床机を並べて客をもてなしたことがきっかけで川床文化が生まれ、現在の川床料理へと発展。
清らかな水と古くからの信仰、そして夏の避暑地としての魅力が重なり合い、“京の奥座敷”として今も多くの人を惹きつけています。
心を整えるパワースポット|貴船神社の見どころと参拝ポイント


緑に包まれ清らかな貴船川が流れる貴船神社は、涼やかで神秘的な空気に満ちています。
夏でもひんやりとした空気が漂い、深呼吸するだけで心が落ち着くような感覚を味わえる場所です。
古くから水の神を祀る社として人々に信仰され、恋愛成就や縁結び、商売繁盛などさまざまなご利益を求めて多くの参拝者が訪れます。
貴船神社にある3つの社
貴船神社は「本宮(ほんぐう)」「奥宮(おくのみや)」「結社(ゆいのやしろ)」の3つの社から成り、それぞれに異なる由来やご利益があります。
これら三社をすべて巡る参拝は「三社詣」と呼ばれ、古くから行われてきました。



ちなみに、観光ブログや口コミでは「本宮 → 奥宮 → 結社」の順で巡ると願いが叶うという説をよく見かけますが、貴船神社の公式サイトには順番についての記載はありませんでした。
よって、巡る順よりも三社すべてを巡って参拝すること自体に大きな意味があるといえるでしょう。
本宮


本宮は貴船神社の中心となる社で、奥宮からご神体が遷されて以降参拝の中心として親しまれてきました。水の神・高龗神(たかおかみのかみ)を祀り、雨乞いや水の恵み、五穀豊穣などにご利益があるとされています。



現在の社殿は、昭和に再建されたものです。
境内には「御神水」と呼ばれる湧き水があり、水の神様を祀る神社ならではの信仰の対象となっています。清らかでまろやかな口当たりが評判で、容器を持参して汲みに訪れる参拝者も少なくありません。
本宮ではぜひ「水占みくじ」に挑戦してみてください。貴船神社は、この水占みくじ発祥の地の一つともいわれています。


水の神様の御前で清らかな水に浸すと白い紙にゆっくりと文字が浮かび上がり、まるで神様からのメッセージを受け取っているような不思議な体験ができます。
奥宮


結社からさらに歩くとたどり着くのが奥宮で、貴船神社創建の地とされる元の鎮座地です。
ここは水の神・高龗神が最初に降り立ったと伝わる神聖な場所で、古くから雨乞いや五穀豊穣、水の恵みを願う信仰を集めてきました。
境内には玉依姫が乗ってきた船を石で覆った「船形石」など、創建の伝承にまつわるスポットも点在しています。
本宮よりも人が少なく静かな森に包まれた空間は、貴船神社の中でも最も強いエネルギーを感じられる場所です。
結社


本宮から徒歩3〜5分ほど、貴船川沿いの静かな参道を進んだ先にある小さな社では、縁結びの神様・磐長姫命(いわながひめのみこと)を祀っています。
磐長姫命は、妹の木花咲耶姫(このはなさくやひめ)とともに天孫・瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に嫁ぐはずでしたが、容姿を理由に返されてしまった過去を持ちます。自らは良縁に恵まれなかったことから、人々の良縁を願う神様として信仰されるようになりました。
境内は本宮よりもこぢんまりしていますが、縁結びや良縁成就のご利益を求める参拝者が一年を通して訪れます。



恋愛や結婚だけでなく人間関係全般の良縁を結ぶとされているため、家族や友人、仕事関係の縁を願う人の姿が絶えません。
かつてはススキなどの細長い葉を結んで祈願していましたが、現在では本宮で授与される細長い緑色の「結び文」に願い事を書き、境内の結び処に結びます。
良縁や復縁を願う人々にとって、結社は今も特別な場所です。
貴船神社がパワースポットと言われる4つの理由
パワースポットとしても知られる貴船神社は、古くから多くの人々の願いを受け止めてきた特別な場所です。その力の強さゆえか、中には「行かない方がいい」と言う人もいるほど。つまり、それだけ強いエネルギーが宿っているということです。
人々の強い想いを引き寄せてきた歴史と伝承を、4つご紹介します。
古くからの雨乞いの祈りの場所
貴船神社は鴨川の水源地に鎮座し、都の水を守る水神を祀っています。古くから水の供給を司る神として信仰され、日照りや長雨の際には「雨乞い」や「雨止み」の祈願が行われてきました。
平安時代には、日照りのときは黒馬を、長雨のときは白馬や赤馬を天皇が献上する習わしがありました。生馬の代わりに、木の板に馬の絵を描いた「板立馬」を奉納することもあり、これが現代の絵馬の原形とされています。
現在も、古来の祈雨儀式を受け継ぐ「雨乞祭」が毎年3月9日に行われます。1年の適度な降雨と五穀豊穣を祈る祭りで、かつては貴船の山奥にある「雨乞の瀧」で儀式が行われていました。
本宮での神事のあとには、絵馬を焼く「絵馬焼納式」が執り行われます。
和泉式部の逸話
平安時代の歌人・和泉式部は、夫・藤原保昌との仲が冷えたことを嘆き貴船神社を訪れたと伝えられています。
ある夜、川辺で蛍を眺めながら、
ものおもへば 沢の蛍も わが身より あくがれいづる 魂かとぞみる
(思い悩むあまり沢を飛ぶ蛍の光が、自分の魂が抜け出して漂っているように見える)
と詠むと、どこからともなく返歌が響きました。
おく山に たぎりて落つる 滝つ瀬の 玉ちるばかり ものな思ひそ
(山奥の滝の水しぶきの玉が飛び散るように、あまり深く思い悩まないように)
この返歌は、貴船明神からの励ましとされており、境内にはこのエピソードにちなんだ「蛍岩」が残っています。
また、鎌倉時代に編まれた説話集『沙石集』巻第十にも和泉式部と貴船神社にまつわるエピソードが記されています。
復縁を願って縁結びの「敬愛の祭祀」を受けた際、巫女から風変わりな所作を求められたものの、恥じて次の歌を詠んだといいます。
ちはやぶる 神のみる目も はづかしや 身を思ふとて 身をやつすべき
(神様が見ておられるのに、たとえ復縁を願う気持ちがあっても恥を忍ぶことはできません)
たまたま境内にいた保昌はこの歌から彼女の慎ましさに心を動かされ、声をかけて連れ帰ったと伝えられています。
このようなエピソードからもわかるように、貴船神社は古くから人々の強い願いや想いを受け止めてきた場所です。恋の悩みに寄り添い、時には神様からの励ましを授け、縁を結び直すきっかけを与えてきました。
和泉式部の物語はただの伝承ではなく、「願いが叶う場所」という信仰を何百年にもわたり支えてきた証といえるでしょう。
龍穴がある
「龍穴」とは、風水で大地のエネルギー(気)が集中し、湧き出す場所を指します。貴船神社の奥宮社殿の真下にはこの龍穴があると伝わっており、奈良県の室生龍穴・岡山県の備前龍穴と並んで「日本三大龍穴」のひとつに数えられています。
龍穴は地下から龍神の力が湧き上がる特別な場所とされ、古来より祭祀や祈祷の重要な場とされてきました。穴は社殿の下にあるため直接見ることはできませんが、正面で参拝すれば龍穴から立ち上るエネルギーを受けられるといわれています。
静寂に包まれた奥宮は本宮とはまた違う厳かな空気が漂い、訪れる人の心身を研ぎ澄ませるパワースポットとして名高い場所です。
丑の刻参り
「丑の刻参り(うしのこくまいり)」とは、深夜の丑三つ時(午前2時頃)に神社を訪れ、強い恨みを持つ相手を呪う民間信仰の儀式です。「白装束にろうそくを頭に立て、藁人形を神木に打ち付ける」そんな光景をテレビや物語で見たことがある方もいるでしょう。
貴船神社もこの丑の刻参りの舞台として知られてきました。特に奥宮は古くから“強い気”が宿る場所とされ、恨みも願いも強く叶えると信じられてきたためです。
とはいえ、恨みや呪いは自分の心も曇らせるもの。せっかくなら、その強い気を恋愛成就や良縁祈願、夢の実現など前向きな願いに向けたいところです。
現在は夜間に扉が閉じられるため丑の刻参りは現実的ではありませんが、「願いを強く届ける場所」という印象は今も参拝者の間に息づいています。
こうした歴史が、貴船神社を“ただの縁結びの社以上”のパワースポットとして際立たせています。
9月の京都・貴船で味わう涼と癒しの川床ランチ


夏の暑さが和らぎ、秋の気配が感じられる9月の京都。なかでも山あいに佇む貴船は、清流と木々に囲まれ、街中とは別世界の涼やかさが広がります。
川面を渡る風や水のせせらぎに包まれていただく川床料理は、この季節だけの特別なご褒美です。
まずは、貴船ならではの川床文化についてご紹介します。
貴船の川床とは?
京都・鴨川や貴船で夏の風物詩として親しまれている川床。川の上や川沿いに座敷を設け、流れる水の涼しさを感じながら食事を楽しむ京都独特の文化です。



貴船では「かわどこ」、鴨川では「かわゆか」と読み方が異なります。
貴船の川床は例年5月1日から9月30日まで営業。川面から立ち上る涼風や、木々を揺らす風が運ぶマイナスイオンに包まれ、真夏でも肌寒さを感じるほどです。
美味しい京料理を味わいながら、自然のBGMとともに心も体も解きほぐされます。
右源太で川床ランチ!貴船で味わう大人の癒し時間【体験レビュー】
貴船でも老舗として知られる「右源太(うげんた)」は、川床文化を代表する名店のひとつ。私は2020年9月中旬に訪れました。
静けさと川のせせらぎに包まれる贅沢な席


案内されたのは、清流のすぐ上に設けられた川床席。足元を流れる川の水は透き通り、岩肌に当たってはねる水音が心地よく響きます。
木陰がやわらかく日差しを遮り川面から吹くひんやりとした風が頬をなでるたびに、夏の名残を忘れるほどの涼しさを感じました。



時折、木々の間から鳥のさえずりが聞こえ、都会では味わえない静けさが広がります。
ここは靴を脱いで上がるスタイルで、椅子席はありません。座ると目線が低くなり、すぐそばを流れる川が視界いっぱいに広がります。
川の流れは涼やかで、見ているだけでも心がほどけていくよう。耳にはせせらぎが、肌には川風が、目には水面のきらめきが届き、五感すべてが自然に包まれる贅沢な時間がを過ごせました。
丁寧なおもてなしと目にも涼やかな京料理
この日のランチは1人1万円ほどのコース。少し高いと感じるかもしれませんが、貴船の川床は夏から初秋だけの期間限定。その特別感やこの場所でしか味わえない雰囲気を考えると、“雰囲気代”込みだと思えば納得です。
料理はどれも味付けが上品で、さすが老舗と感じさせるものばかり。特に印象に残ったのは、香ばしく焼き上げられた鮎の塩焼き。外はパリッと、中はふっくらとした身から川魚ならではの香りが広がり、清流のせせらぎと相まって格別でした。


季節の食材を使った京懐石は、見た目も涼やかで川床の景色にぴったり。温かいものは湯気を立てて、冷たい料理はきりっと冷えていて、口に運ぶたびに温度や香りまで計算された心遣いが伝わってきます。
お店の方の接客も程よい距離感で、川床の時間を存分に楽しめました。
予約・送迎・利用時の注意点など
右源太は完全事前予約制で、電話・公式サイトのどちらからでも予約可能です。利用は大人2名以上からで、全員が同じ料理内容での申し込みとなります。
当日の天候や水位によっては、晴れていても川床ではなく館内での食事に変更される場合があります。特に雨や雨上がり直後、増水時は安全のため川床は使用できません。この点は予約時や来店前に確認しておくと安心です。
施設のトイレは道路を渡った本館側にあり、川床席からは少し移動が必要です。また、叡山電鉄「貴船口」駅からは送迎サービスも利用できるため、アクセス面でも不安はありません。
店名:貴船 右源太
住所:京都府京都市左京区鞍馬貴船町76
電話番号: 050-3647-2112
公式サイト:https://www.ugenta.co.jp/(完全予約制)
右源太は「食べログ」からも予約できます。
心と体にご褒美を!9月の京都旅は貴船でリセット


日々の忙しさや人間関係の疲れは、気づかないうちに心と体にたまるもの。そんなときこそ都会から少し離れて、自分のためだけの時間を過ごしましょう。



自然の中で深呼吸し、神社で気持ちを整え、美味しい料理で内側から満たされる“デトックスの一日”を叶えてくれるのが、9月の貴船です。
夏の名残が薄れ、朝夕に涼しさを感じ始める9月。川床でいただく京料理の美味しさはもちろん、貴船の澄んだ空気や川のせせらぎそして静かに佇む貴船神社の凛とした雰囲気が心と体をやさしくほどいてくれます。
ぜひこの時期の貴船を訪れてみてください。